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名古屋高等裁判所 昭和41年(行コ)7号 判決 1970年6月11日

控訴人 株式会社新興社

被控訴人 名古屋中税務署長

訴訟代理人 越知崇好 外三名

主文

控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴代理人は「被控訴人は、控訴会社に対する昭和三五年一〇月一日から昭和三六年三月三一日までの事業年度分の法人税に関し昭和三八年六月二八日付でした法人所得金額六七五万一、八六二円、法人税額二五〇万一、九六〇円、過少申告加算税一二万五、七五〇円なる更正決定を取り消せ。訴訟費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

二、控訴代理人の陳述

(一)  請求原因として次のとおり述べた。

(1)  控訴会社は、昭和三五年一〇月一日から昭和三六年三月三一日までの事業年度の法人税につき、欠損金額二三万九、六七四円、法人税額零とする確定申告書を昭和三六年五月三一日被控訴人に提出した。

(2)  被控訴人は、右申告に対し昭和三八年六月二八日所得金額を六七五万一、八六二円、法人税額を二五〇万一、九六〇円、過少申告加算税額を一二万五、七五〇円とする更正決定(以下本件更正決定という)をし、同日控訴会社に本件更正決定を通知した。控訴会社は本件更正決定を不服とし同年七月二九日被控訴人に対し異議を申し立てたが、被控訴人において同年一〇月二九日異議申立棄却の決定をした。そこで控訴会社は更に同年一一月二八日名古屋国税局長に対し審査の請求を行つたところ、同局長において昭和四〇年一月一二日本件更正決定の一部を取り消し、所得金額を六七二万六、一〇〇円、法人税額を二四九万二、二〇〇円、過少申告加算税額を一二万五、二五〇円とする裁決をした。

(3)  被控訴人が本件更正決定をしたのは、控訴会社において昭和三五年一一月二五日控訴会社所有の名古屋市昭和区藤成通四丁目二番の一宅地一〇九・〇九平方米(三三坪、以下(1) の宅地という)及び同所四番宅地四二九・七五平方米(一三〇坪、以下(2) の宅地という)を訴外みかど交通株式会社(以下訴外みかど交通と略称する)に対し代金五五万円で譲渡(同日所有権移転登記)したことをもつて低廉譲渡であるとし、これを否認したことによるものである。しかし、右否認は許されないことである。その理由は次のとおりである。

(イ) 控訴会社が(1) 、(2) の宅地を訴外みかど交通に譲渡した昭和三五年一一月二五日当時、(1) 、(2) の宅地については昭和三三年一月二九日付大蔵省よりの国税滞納処分による差押がなされており且つ昭和二九年一二月一五日根抵当権設定を原因として、債権元本極度額金六〇〇万円、利息及び損害金日歩金三銭、債務者控訴会社、抵当権者訴外株式会社東海銀行(以下訴外東海銀行と略称する)とする根抵当権設定登記がなされていた。

(ロ) 昭和三五年一一月二五日当時訴外東海銀行は控訴会社に対し貸付金及未収利息金合計三、五九〇万四、八六九円(貸付元本金二、九三二万四、〇〇〇円、未収利息金六五八万八六九円)の債権を有していた。右債権は、(1) 、(2) の宅地について設定された前記根抵当権の被担保債権である。もつとも、右債権は(1) 、(2) の宅地の外別紙物件目録記載の物件及び有価証券が共同担保となつていた。

ところで、(1) の宅地の昭和三五年度固定資産税評価額は一〇万二、八一二一円、(2) の宅地の右評価額は四〇万五、〇五九円であり、別紙物件目録記載の物件の右評価額は同目録記載のとおりで二九四万四、二二七円(二九一万四、二二七円が正しく控訴人は誤つた計算をしている)である。また右有価証券の昭和三五年一一月二五日現在の時価は二九一万八、〇〇〇円であつた。従つて、右債権の内(1) 、(2) の宅地によつて担保される額は、前記根担当権の元本極度額の割合によれば四七万八、三七二円(五〇万七、八八一円((1) 、(2) の宅地の評価額)十二九四万四、二二七円(別紙物件目録記載の物件の評価額)十二九一万八、〇〇〇円(有価証券の時価)六三七万一〇八円、六〇〇万円((1) 、(2) の宅地の根抵当権の元本極度額)÷六、三七〇、一〇八×五〇七、八八一の計算による)、債権元本の割合によれば二三三万七、九六七円(二、九三二万四、〇〇〇円(債権元本額)÷六、三七〇、一〇八×五〇七、八八一の計算による)、総債権の割合によれば二八六万二、六五一円(三、五九〇万四、八六九円(総債権額)÷六、三七〇、一〇八×五〇七、八八一の計算による)となる。右のように、(1) 、(2) の宅地は訴外東海銀行に対する控訴会社の債務を負担していたので、控訴会社は、(1) 、(2) の宅地を訴外みかど交通に売却する際訴外みかど交通をして(1) 、(2) の宅地が負担する右債務を重畳的に引き受けさせた上代金を五五万円と定めたのである。従つて、(1) 、(2) の宅地を代金五五万円で訴外みかど交通に譲渡したことは低廉譲渡でないから、これを低廉譲渡として否認することは許されない。なお昭和三五年一一月二五日当時、(1) 、(2) の宅地及び別紙物件目録二記載の土地上に同目録三記載の建物が建在しているから、(1) 、(2) の宅地についてはさら地としてでなく建付地として評価さるべきである。

(4)  右のとおりであるから本件更正決定の取消を求める。

(二)  一被控訴人の主張に対する反論として次のとおり述べた。

(1)  被控訴人主張の事実中、本件更正決定において被控訴人がその主張のような本件課税所得金額の計算をしたこと、控訴会社が被控訴人主張のように同族会社であることを認めるが、控訴会社のなした(1) 、(2) の宅地の譲渡が時価より著しく低廉な価額でなされたということを否認する。

(2)  本件譲渡当時、訴外みかど交通が将来引受債務を弁済した場合、控訴会社に対し求償するも無資力で取立不能の状態にあることが客観的に十分認識できた状態での取引であるから、(1) 、(2) の宅地の時価を評定するについては当然に抵当権の債務が考慮せられるべきである。本件においては、通常の重畳的債務引受の場合とは異り、無資力である控訴会社と並んで資力を有する訴外みかど交通が抵当債務を引受けた結果、訴外みかど交通において控訴会社に代つて抵当債務を弁済しなければならないことにつき確実性を有するに至つたので、見越損失を考慮し妥当な売買価格を定めたものである。

(3)  訴外みかど交通は、(1) 、(2) の宅地を取得し、その代り抵当債務を引き受けたのであるが、たまたま売渡人たる控訴会社が無資力であつたため訴外みかど交通の求償権は事実上これを行使し得ない状態に至つたに過ぎないのであつて、被控訴人主張のように訴外みかど交通が求償権による金員を控訴会社に贈与する意思など無かつたものである。

(4)  控訴会社が無資力であるため訴外みかど交通の重畳的債務引受は免責的債務引受をした形になつているが、法的には控訴会社は免責されたのではなく依然として訴外東海銀行に対し債務を負担しているのであるから、控訴会社が金三、五九〇万四、八六九円の利益を得たことになるとの被控訴人の主張は理由がない。

三、被控訴代理人の陳述

(一)  答弁及び主張として次のとおり述べた。

(1)  控訴会社が請求原因として主張する事実の内、その(1) 及び(2) を認める。その(3) は、被控訴人が控訴会社主張のような理由で本件更正決定をしたこと、(1) 、(2) 、の宅地につき控訴会社主張の国税滞納処分による差押、訴外東海銀行を抵当権者とする根抵当権が設定されていたこと、控訴会社の訴外東海銀行に対する債務に対しては、(1) 、(2) の宅地の外別紙物件目録記載の物件が共同担保物となつていたことを認めるが、その余を争う。

(2)  本件更正決定における本件課税所得金額の計算は次のとおりとなる。

(イ) 控訴会社申告に係る当期欠損金 二三万九、六七四円

(ロ) (加算)寄附金の損金不算入金 六九七万六、七四八円

(ハ) (減算)減価償却超過額の当期認容額 七、六二四円

(ニ) 差引所得金額((ロ)-(イ)-(ハ)) 六七二万九、四五〇円

右(ロ)の寄附金の損失不算入額の計算は別紙寄附金の損金不算入額計算書のとおりである。即ち、控訴会社は、昭和三五年一一月二五日訴外みかど交通に対し控訴会社所有の(1) 、(2) 川、岡の宅地を代金五五万円で譲渡した。被控訴人が同日現在における(1) 、(2) の宅地の時価を調査したところ、(1) の宅地の時価は一六〇万八、七五〇円(解当り単価四万八、七五〇円)、(2) の宅地の時価は六〇一万二、五〇〇円(坪当り単価四万六、二五〇円)が相当であつて、控訴会社の訴外みかど交通に対する右譲渡価額は時価にくらべて著しく低廉であると認められた。そこで、このように低廉譲渡が行われた理由について調査したところ、右譲渡時において、控訴会社は、訴外恵美龍雄及びその同族関係者である訴外新興繊維、訴外淡路屋エミ等を主たる出資者とする旧法人税法(昭和二二年法律二八号、以下法人税法という)第七条の二に定める同族会社であり、訴外みかど交通も亦控訴会社と代表者を同じくする関係会社であつた。そして、前記のような低廉譲渡は、純然たる他人の間、又は非同族会社においては通常みられない異常な取引であつて、訴外恵美の恣意によつて行われた行為であると認めざるを得なかつた。そこで、被控訴人は、控訴会社の右譲渡行為及び計算を同族会社なるが故になし得た行為であるとして法人税法第三一条の三に定める「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定を適用し、控訴会社のなした行為計算にかかわらず政府の認めるところにより控訴会社の所得を計算し更正処分を行うこととした。即ち、被控訴人の調査による前記(1) 、(2) の宅地の七六二万一、二五〇円と控訴会社の譲渡価額五五万円との差額七〇七万一、二五〇円を控訴会社より訴外みかど交通に贈与したものと認め、これを法人税法第九条第三項に定める寄附金として法人税法施行規則第七条に定める寄附金の損金算入限度額の計算を行い、限度額九万四、五〇二円を超える部分の金額六九七万六、七四八円を控訴会社の法人所得に加算したものである。

次に、前記(ハ)の減価償却超過額の当期認容額七、六二四円というのは、控訴会社が当該事業年度前の事業年度においてなした減価償却額で法人所得の計算上損金と認められなかつた金額のうち当期に減価償却すべきものとして損金に算入されたものであり(法人税法施行細則第三条かつこ書に定める金額)、被控訴人が進んで損金として減算したものである。

(3)  抵当権付物件に対する税務上の取扱は次のとおりである。

(イ) 抵当権は、元来目的物の有する担保価値を把握し、当該債権を債務者が弁済しない場合に、抵当権者が目的物を処分して他の債権者に先だつて自己の債務の弁済を受ける権利である。従つて、抵当権は物件の通常の交換価値(時価)の評価には何ら影響すべきものではなく、まして抵当権付物件の時価評価に際して被担保債権額を差し引くべき合理的根拠はない。控訴人の主張は、既に抵当権の付着する物件を再び抵当権の目的とするために当該物件の担保価値を評価するに妥当な理論であるが、抵当権物件の時価評価においては妥当性を欠くものである。右のように、抵当権が設定されていることを理由に当該物件の交換価値を減少させることは合理的でなく且つ特別の法律上の規定がない以上税務の取扱においても抵当権付物件の評価をさら地に比べ減少させることは許されない。

(ロ) 次に、抵当権付物件そのものの評価を減ずるのではなくかかる抵当権の設定にともなう将来の不安ないしは危険性を税法上費用或は損失として認識し、課税所得の計算過程において考慮する余地はない。税務における費用、損失の認識については、基本的にはその事業年度終了の日までに確定しているものに限るのであつて、将来発生する費用又は将来蒙るべき損失に対しては税法上特に認められている一部の場合を除いて損金に算入することは認められないものであるところ、抵当権の設定にともなう危険性は、確定した損金の一種として認識するにはその危険が実現する蓋然性に欠け、又現行税法において抵当権についての特別の規定がないからである。

(4)  国税徴収法により差押えられた物件に対する税務上の取扱は次のとおりである。

(イ) 同法によつて不動産が差押えられても、滞納者は当該物件の処分を絶対に禁止されるものでなく、ただその処分行為をもつて差押債権者である国に対抗することができないだけである。従つて、国は、差押後滞納者が当該物件を処分しても換価手続を進めることができる滞納者が差押処分を受けるということは、すでに本件納付すべき国税を滞納している状態にあるのであるから、差押えられた物件は、単に抵当権が付着しているのみで未だ履行の遅滞状態になつていない抵当権付物件に比べ換価処分に対する危険性が大である。このように危険性が大であるだけに、差押えられた物件につき取引する場合には、差押を解除するとか或は解除と同じ効果を有する決済方法(買主が差押国税債権額だけ売買代金から控除した金額を売主に手交する等)が行なわれ、その際には適正な時価評価を行なうものと考えられる。

(ロ) 滞納者が滞納税金を支払わなければ差押物件は強制的に換価されるが、それはあたかも債務者が債務を弁済しなければ抵当権付物件が換価されるのと同様であり、且つ差押処分も抵当権の設定もともに当該対象物件の交換価値に着目し、それの保全把握を目的とする点において軌を一にするものである。従つて、税務上は、差押の行われた物件についても、抵当権物件の場合と同様、差押は物件そのものの有する客観的交換価値に何ら影響ないものとして取扱われるのである。

(5)  控訴会社は、「訴外みかど交通が控訴会社の訴外東海銀行に対する昭和三五年一一月二五日現在の金三、五九〇万四、八六九円の債務を重畳的に引き受けたから、控訴会社において訴外みかど交通に対し(1) 、(2) の宅地を代金五五万円で譲渡したことは低廉譲渡でない。」と主張するが、仮に、右のように訴外みかど交通が重畳的に債務を引き受けたとしても、右引受によつて控訴会社の訴外東海銀行に対する債務が消滅するものでないから、右引受を理由に(1) 、(2) の宅地を時価より低廉に売却する理由がない。又仮に、訴外みかど交通が債務引受人として訴外東海銀行に対する控訴会社の債務を弁済したとしても控訴会社に対し求償権を取得するから、控訴会社は経済的利益を受けないものである。

(6)  若し、控訴会社の右主張が「訴外みかど交通は、その取得するであろう控訴会社に対する求償権を行使することが不可能であることを予想認識した上で右重畳的債務引受をしたものであり、それ故控訴会社から(1) 、(2) の宅地を抵廉な価額で譲り受けた。」との趣旨であるならば、本件のような実情における訴外みかど交通の行為は、単に求償権の行使が不可能であることを認識して債務を引き受けたというにとどまらず、むしろ将来取得するであろう求償権二、八八三万三、六一九円(控訴会社の訴外東海銀行に対する債務金三、五九〇万四、八六九円より(1) 、(2) の宅地の価額七〇七万一、二五〇円(時価七六二万一、二五〇円より帳簿価額金五五万円を控除)を差し引いた金額)を控訴会社に対し放棄(贈与)する意思があつたものと認めるべきである。

(7)  仮に、訴外みかど交通の債務引受が免責的引受と同視すべきものであるとすれば、そもそも、控訴会社及び訴外みかど交通は、(1) 、(2) の宅地について当初から金五五万円の価値の土地であるから右金額を譲渡代金として約定したものではなく、むしろ(1) 、(2) の宅地につき金三、五九〇万四、八六九円(控訴会社の訴外東海銀行に対する債務額)以上の価値を認め、その譲渡に際して譲受人である訴外みかど交通において右債務額を免責的に引き受け更に金五五万円を加えて買い受けることに合意し、右金五五万円を精算金として控訴会社に交付したものとなすべきである。従つて、控訴会社は、(1) 、(2) の宅地を訴外みかど交通に譲渡することによつて金三、五九〇万四、八六九円の利益を得たことになり、右金員より(1) 、(2) の宅地の帳簿価額金五五万円を控除した金三、五九〇万四、八六九円が控訴会社の譲渡益となる。

(8)  控訴会社の取得した利得は、右金二、八八三万三、六一九円ないし金三、五九〇万四、八六九円であるにもかかわらず、本件更正決定の認定所得は金六九七万六、七四八円であり、現実に控訴会社が利得した金額の範囲内であるから、本件更正決定は適法なものである。

四、証拠<省略>

理由

一、控訴会社が昭和三五年一〇月一日から昭和三六年三月三一日までの事業年度の法人税につき、欠損金額二三万九、六七四円、法人税額零とする確定申告書を昭和三六年五月三一日被控訴人に提出したこと、被控訴人が右申告に対し昭和三八年六月二八日所得金額六七五万一、八六二円、法人税額を二五〇万一、九六〇円、過少申告加算税額を一二万五、七五〇円とする本件更正決定をし、同日控訴会社にその通知をしたこと、控訴会社がその主張の日本件更正決定に対し被控訴人に異議の申立をしたが控訴会社主張の日に被控訴人において右異議申立棄却の決定をしたこと、控訴会社がその主張の日に名古屋国税局長に対し審査の請求を行つたところ、同局長において昭和四〇年一月一二日本件更正決定の一部を取り消し、所得金額を六七二万六、一〇〇円、法人税額を二四九万二、二〇〇円、過少申告加算税額を一二万五、二五〇円とする裁決をしたこと、被控訴人が、本件更正決定において所得金額を六七二万九、四五〇円と認定したのは、(イ)控訴会社申告に係る当期欠損金二三万九、六七四円、(ロ)(加算)寄附金の損金不算入額六九七万六、七四八円、(ハ)(減算)減価償却超過額の当期認容額七、六二四円、(ニ)差引所得金額((ロ)-(イ)-(ハ))六七二万九、四五〇円の計算によるものであることは当事者間に争いがない。

二、控訴会社は、被控訴人の右所得金額認定計算の内(ロ)の加算だけを違法として争うものであることは、その弁論の全趣旨によつて明らかであるので、右(ロ)の加算の適否について審接する。

(一)  右(ロ)の加算は、被控訴人が、法人税法(昭和二二年法律第二八号、以下同じ)第七条の二に定める同族会社(訴外恵美龍雄を中心とする)である控訴会社において昭和三五年一一月二五日その所有にかかる(1) 、(2) の宅地を代金五五万円で訴外みかど交通に売却譲渡(同日所有権移転登記)した行為をもつて時価より著しい低廉な価額で譲渡したものであるとし、法人税法第三一条の三に定める「同族会社等の行為又は計算の否認」の規定を適用し、控訴会社のなした行為、計算にかかわらず被控訴人の認めるところにより控訴会社の所得を計算したことによるものであることは当事者間に争いがない。

(二)  <証拠省略>によると、(1) 、(2) の宅地につき右譲渡が行われた昭和三五年一一月二五日当時における(1) 、(2) の宅地の時価は八一五万円(坪当り五万円)であることが認められる。

(三)  控訴会社は、「右譲渡当時(1) 、(2) の宅地については、控訴会社主張の大蔵省よりの国税滞納処分による差押がなされており、且つ控訴会社主張のような内容の根抵当権が設定されていたから、これらを考慮するときは(1) 、(2) の宅地の前記代金額は時価より著しく低廉のものではない。」と主張する。そして、(1) 、(2) の宅地について右差押、根抵当権設定が存在していたことは当事者間に争いがない。しかし

(1)  右差押は、控訴会社が国税を滞納したため滞納処分としてなされたものであるから、右譲渡以後控訴会社において滞納国税を納付しないときは、(1) 、(2) の宅地を公売等により強制換価され、その代金をもつて滞納国税の支払に充当される危険性を有することは疑がないが、他面右譲渡以後控訴会社において滞納国税を納付すれば右差押は解放されるのであるから、右譲渡当時においては(1) 、(2) の宅地に対する右差押の負担は確定的のものということができない。従つて、(1) 、(2) の宅地を譲渡する際右差押を考慮して適正な代価を定めるということはできたい(仮に譲渡当時控訴会社が無資力であつたとしても、(1) 、(2) の宅地についての滞納処分による滞納国税の支払があるまで無資力であることを確定するものではない)ことであるから、(1) 、(2) の宅地の代価が適正であつたかどうかについては右差押を考慮すべきであるとの控訴会社の主張は採用できない。

(2)  次に、前記根抵当権は、控訴会社が訴外東海銀行に対する債務を担保するために設定されたものであるが、(1) 、(2) の宅地についての右根抵当権による負担というものも控訴会社より訴外みかど交通に(1) 、(2) の宅地を売却譲渡した当時確定的であつたということはできず、その後債権者たる訴外東海銀行が右抵当権を実行し(1) 、(2) の宅地が競売換価され、その代金をもつて被担保債権の弁済に充当された時始めて右負担が確定的となるものである。従つて、前記差押の場合と同様に(1) 、(2) の宅地の代価を定めるにあたり、右根抵当権を考慮すべきであるとの控訴会社の主張も採用できない。控訴会社は、(1) 、(2) の宅地を売却譲渡した昭和三五年一一月二五日当時の控訴会社が訴外東海銀行に対し負担している被担保債務を基準にし、同日現在(1) 、(2) の宅地についての根抵当権による負担が確定しているように主張するが同日現在において(1) 、(2) の宅地上の根抵当権による負担は確定的なものでないこと前記説示のとおりであるから、木主張は理由がない。

(四)  控訴会社は、(1) 、(2) の宅地は、その譲渡当時控訴会社主張の建物が存在したから、建付地としての時価を評価すべきであると主張するが、<証拠省略>を総合すると、控訴会社主張の建物は(1) 、(2) の宅地の北力に接続する別紙物件目録記載の一の宅地上に存在し、(1) 、(2) の宅地をさら地と見るべきものであることが認められるので、右主張も理由がない。

(五)  控訴会社は、「訴外みかど交通は、(1) 、(2) の宅地を控訴会社より買受ける際、控訴会社の訴外東海銀行に対する債務((1) 、(2) の宅地に設定された根抵当権によつて担保されているもの)を重畳的又は免責的に引き受けた」と主張するが、右事実を認めるに足る証拠はない。

(六)  右によれば、控訴会社は、時価八一五万円である(1) 、(2) の宅地をわずか五五万円の代金で訴外みかど交通に売却譲渡したことになる。そして、<証拠省略>を総合して認められる、「控訴会社及び訴外みかど交通の代表取締役は恵美龍雄であること、訴外みかど交通は、タクシー営業を行うことを目的として設立されたもので、昭和三四年三月頃陸運局に対し右営業許可の申請をしたが、設備不充分等の理由で右申請が却下されたこと、そこで、恵美龍雄は、控訴会社より訴外みかど交通へ(1) 、(2) の宅地を譲渡し、訴外みかど交通において(1) 、(2) の宅地上に営業所を設置するということで再度陸運局に右申請をすることにし、(1) 、(2) の宅地の売却譲渡が行われたこと、右譲渡の際代金を五五万円としたのは、右金額以下では法務局において売買による所有権移転登記の受付を受理してくれないためであつたこと」等の事実を考えると、控訴会社が時価より著しい低い代金で(1) 、(2) の宅地を訴外みかど交通へ譲渡したのは、控訴会社が恵美龍雄を中心とする同族会社であることによるものと認められるものであり、右譲渡により通常の場合に比し法人税の不当な減少となると認められるから、被控訴人において、法人税法第三一条の三により控訴会社の行為計算を否認し、(1) 、(2) の宅地の時価を七六二万一、二五〇円とし、右金額と控訴会社の譲渡価額五五万円の差額七〇七万一、二五〇円を控訴会社より訴外みかど交通に贈与したものと認め、これを法人税法第九条第三項に定める寄附金として法人税法施行規則第七条に定める寄附金の損金算入限度額の計算(その計算は別紙寄附金の損金不算入額計算書のとおりである、なお控訴会社の資本金が昭和三五年頃一、五〇〇万円であつたことは、<証拠省略>によつてこれを認めることができる)を行い、限度額九万四、五〇二円を超える部分の金額六九七万六、七四八円を控訴会社の所得に加算したことは相当であつて、違法の点はない。

三、控訴会社は、被控訴人の前記所得金額認定計算の内(ロ)の加算を除いたその余のものについては争つていないから、これらは適正で違法な点はないものと推認される。

四、そうすると、本件更正決定が違法なものであるとして、これが取消を求める控訴会社の本訴請求は理由がなく棄却すべきものである。

五、なお、控会訴社の本訴は、控訴会社(第一審原告、控訴人)と名古屋国税局長(第一審原告、被控訴人)との間の当裁判所昭和四〇年(行コ)第一〇号控訴事件において行政事件訴訟法第一九条、第二〇条による請求の追加的併合として提起されたものであり、その後右控訴事件における訴は適法に取り下げられたものである。従つて、右控訴事件については裁判をしない。

六、よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 布谷憲治 福田健次 山内茂克)

物件目録<省略>

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